ポーランドの交通事情その1

― 道路について ―

[2023年5月配信]

今回は元大阪府ITステーション職員で現在はポーランドに在住しているAさんにバリアフリーの観点から「ポーランドの交通事情」という話題でインタビューをしましたので、その内容を紹介します。

インタビューでは、「ポーランドの道路事情について」「ポーランドのバス・トラム(路面電車)について」「ポーランドの電車について」という三つの話題で話を聞きました。

今月号では、「ポーランドの道路事情について」の話を紹介します。
 

幸田:ポーランドでは、歩道と車道の区別はどのようにされているのですか。

Aさん:日本のように歩道と車道の間にガードレールなどは設置されておらず、白線で歩道と車道を区切っているわけでもありません。

歩道と車道の間には、少し段差があります。また、歩道は、草が生える土の道で、車道はアスファルトなどで整備されています。
見た目には、歩道と車道の違いが分かりますが、視覚障がいのある方には分かりにくく、いつの間にか歩道から離れ、道路をあるいているということもあるのではと思います。
 

幸田:ポーランドには音響信号機があるのですか?

Aさん:音響信号機が設置されているところが多いです。ただ、信号が青であることを知らせる音がアラームのような高周波の音でそれが連続して鳴っているので、少し不快に感じます。

日本の音響信号はカッコーとピヨピヨで音を使い分けていますが、ポーランドでは、音を使い分けしていないところの方が多い気がします。

また、あまり意識したことがありませんが、夜間は音を鳴らしていないところが多いと思います。
 

幸田:歩道には日本のように点字ブロックがあるのですか?

Aさん:日本と同じ黄色い点字ブロックが歩道に設置されています。

日本の物より少し点の高さが低いような気がしますが…。点字ブロックは、日本のように目的地まで道を案内するように丁寧に敷かれているわけではありません。横断歩道の前やバス停の周辺に申し訳程度に設置されています。

ただ、すべての横断歩道やバス停にあるわけでもないので、どういう前提で敷かれいるのか分かりません。
 

幸田:ポーランドには日本の路面電車のような乗り物で「トラム」というものがあると聞きました。トラムが車道を走っている間、歩行者が安全に歩けるように何か工夫されていますか?

Aさん:トラムは一般車道を走っています。そのため、場所によっては車とトラムの両方が通るために、交差点が複雑になっているところもあります。
トラムは日本の路面電車と同様、信号を守りながら車道を走っています。ただ、信号のない横断歩道もあるので、注意が必要です。

晴眼者は横断歩道近くのトラムの駅に停車しているトラムが発車するかどうか確認しながら横断歩道を渡ることができますが、視覚障がいのある方にとっては、音もなくいきなりトラムが近づいてくるので、同伴者がいないと危険だと思います。
 

幸田:ポーランドでも道路工事が行われると思いますが、工事現場では、日本のように警備員が常駐し、歩行者が安全に歩けるように誘導してくれるのですか?

Aさん:工事現場で警備員を見かけたことがほとんどありません。危険なところは、自分で判断するようにというところでしょうか。

ポーランドでは、長期間にわたり道路工事をしているところが多いのですが、障がい者への配慮がほとんどないように思えます。
障がいのある方が困るのではと思われる例を二つあげます。

一つは、私が通勤で使っている交差点です。
ここは比較的大きな交差点なのですが、何の前触れもなく、通行止めになり、人や車が通れないようにフェンスが立てられます。
通常なら直進して道路を渡って向かい側の歩道に行くことができますが、フェンスが立てられているため、道路をコの字型に迂回しなければなりません。もちろん、警備員はいません。

二つ目は、買い物に使用する道路の工事についてです。こちらはトラムが通る比較的大きな道路です。
歩行者を安全に誘導するために道路上にフェンスが立てられていますが、そのフェンスの位置が日によって変わるのです。
また、迂回路も頻繁に変更されるうえにトラムの駅も通り過ぎなければならないときもあるなど、複雑です。こちらにも警備員はいません。

視覚に障がいのある方は、同行者がいた方が安全だと思います。道が頻繁に変更されるので、一人で歩いていると途方に暮れるのではと思います。

ポーランドの工事現場は、障がい者だけでなく、すべての人に対して不親切だと思います。
何かあっても歩行者の責任のようです。ポーランドでは、誰も責任を取りません。
 

幸田:工事現場以外で道路を歩くうえで不便だと思うところはありますか。

Aさん:私の自宅近くの歩道では、車がとめられていたり、布袋に入った巨大な粗大ごみが置かれていたりするため、道幅が狭くなっていることがよくあります。
車いすの方は通りにくいだろうし、視覚障がいのある方には危険だしで、迷惑な話だと思います。
 

幸田:日本では、横断歩道を渡る際、車がなかなか止まらず、渡ることに苦労します。ポーランドでは、スムーズに横断歩道を渡ることができますか。

Aさん:ポーランドでは、歩行者がいる場合、車は横断歩道の手前で停止しなければならないという決まりがあります。違反すると高額な罰金が課されるため、ほとんどの車が横断歩道の手前で停止し、歩行者を先に渡らせてくれます。

また、障がいのある方が横断歩道でないところで道路を渡ろうとしている場合、車には停止義務があります。

ただ、自分勝手に乱暴な運転をする人もいるので、道路を横断するときは注意が必要です。
 

幸田:ポーランドの道路事情を聞いていると、ハード面でのバリアが多く、障がいのある方が一人で街を歩くにはハードルが高いように思えます。
このような場合、ソフト面で周囲の人がサポートしてくれると乗り越えられることもあると思いますが、ポーランドの方は、障がいのある方が困っているとき、サポートしてくれるのでしょうか。

Aさん:障がいのある方が困っていると、声をかける。これがポーランド人の特徴です!
 

「ポーランドの交通事情その1 道路事情について」のインタビューは以上です。いかがでしたか?

「外国はバリアフリーが進んでいる」ということを聞くことがありますが、ポーランドの道路は、日本よりバリアがあるのかもしれません。
しかし、ハード面でのバリアがあっても、「困っている障がい者を見かけると声をかける」という親切なポーランドの方がたくさんいるようです。
このように街で声をかけてくれたら、ハード面のバリアも、その人と一緒に乗り越えられるのではと思いました。
 

私も20年ほど前にアメリカに行ったことがありますが、当時は歩道に点字ブロックはほとんど敷かれておらず、音響信号もありませんでした。
しかし「車が来る」「左に溝がある」「ポールにぶつかる」など、周囲の人がたくさん声をかけてくださり、特に困ることもなく一人で歩くことができました。

もちろんハード面でのバリアを取り除くことは必要ですが、このようにソフト面でサポートしていただけると乗り越えられるバリアもたくさんあることを改めて思いました。
 

「ポーランドの交通事情」については、また、このコーナーで紹介します。
お楽しみに!
 

【参考】

ポーランドのトルンの道路の写真をいただきました。
音響信号の動画もあります。
ご興味のある方はぜひご覧ください!

http://www.itsapoot.jp/mailmaga/PolandRepo1.html
 


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